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バロック中期 Page.2

鍵盤音楽

まず、ローマのサン・ピエトロ大聖堂のオルガニストとして活躍したフレスコバルディ Grirolamo Frescobaldi(1583年~1643年)が重要です。鍵盤楽器の即興演奏の名手として知られ、リチェルカーレ、カンツォーナ、トッカータ、変奏曲などを作曲し、後の鍵盤音楽の基礎を作りました。因みに「探求する」などのイタリア語に由来するリチェルカーレはモテットなどの多声の合唱曲をオルガンで演奏することから生まれた対位法的なオルガン曲。トッカータは「触れる、楽器を奏でる」を意味し、本格的に演奏を始める前の試し弾きのような曲だったのが、独立性のあるいくつかの部分に分かれた即興的な性格の楽曲の名称になりました。カンツォーナは「歌」の意味。フランスの多声のシャンソンが器楽曲になったものです。フレスコバルディの名作にオルガンやチェンバロのための《トッカータ集》や晩年のオルガン曲集《音楽の花束》があります。

▲ フレスコバルディの肖像画

▼ フレスコバルディ:トッカータ Toccata Secunda

オランダ、アムステルダムのオルガニスト、ヤン・ペータースゾーン・スウェーリンク Jan Peterszoon Sweelinck(1562年~1621年)も即興演奏の名手でした。フーガ風のファンタジアが有名ですが、イギリスから亡命してきたブルなどの音楽家たちから学んだ変奏曲の技法とイタリア風の対位法を結び付けた作品を数多く書きました。優れた演奏家であると同時に優れた教師でもありドイツからの留学生を通して、スウェーリンクの鍵盤音楽の芸術は北ドイツの音楽家たちへ、さらにはバッハへと受け継がれていきます。

▲スウェーリンクの肖像画

♪ スウェーリンク:半音階的ファンタジア(前半のみ)

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スウェーリンクのチェンバロ音楽の名作です。半音で下行する冒頭主題に対位主題が加わって対位法的に進行していきます。17世紀にしばしば用いられたミーントーン(中全音律)と呼ばれる調律法が用いられました。長3度の音程が美しく響き、不協和な響きが目立ちやすいという特徴があります。

ヨハン・ヤーコプ・フローベルガーJohann Jacob Froberger(1616年~1667年)はドイツのシュトゥッツガルトに生まれ、1637年から1658年までウィーンの宮廷オルガニストを務めますが、その間ローマに留学してフレスコバルディに師事したり、ブリュッセルやパリ、ドレスデンなどを旅し、各地の音楽家たちと交流。イタリアの影響を受けたトッカータやリチェルカーレ、カンツォーナ、フランスの音楽からは30の鍵盤のための組曲が生まれました。とくにリュート音楽から分散和音や装飾音の技法を学んでいます。とくに重要なのは組曲です。アルマンド、ジーグ、クーラント、サラバンドの舞曲楽章で構成されていますが、作曲家の没後にこれらの作品はアルマンド、クーランド、サラバンド、ジーグの順で出版されたことから、後にバロックの組曲の典型的な楽章配列になりました。

▲フェルメールの「ヴァージナルの前に座る女」

フェルメール(1632年~1675年)はオランダのデルフトで活躍した画家です。この絵のように17世紀のヨーロッパでは市民たちが音楽を楽しみ、ヴァージナル(チェンバロ・タイプの長方形の箱型の楽器)やヴィオラ・ダ・ガンバ(絵の手前)、リュート、リコーダーなどの楽器が愛好されました。