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交響曲第9番

交響曲第9番二長調の第1楽章の出だしでは、第2ヴァイオリンが、ファ♯ー・ミー、ファ♯ー・ミー と最初のテーマを奏でます。

【譜例3】

これは、前作の交響曲である『大地の歌』の最終楽章『告別』の最後に、独唱が「永遠に、永遠に…」という歌詞で、ミー・レー、ミーレー と歌ったメロディーを全音上げたものです。

この2度下りる2つの音のメロディーは「告別のモティーフ」と呼ばれるもので、告別のモティーフで始まるこの交響曲第9番は、まさに人生への別れをつづった曲なのです。

特にこの交響曲では、『アダージョ』と題された終楽章である第4楽章が大変感動的です。

第1と第2ヴァイオリンが、最も音に張りと量感のある最低弦によって、悲痛な単旋律を歌うところから、この楽章は始まります。

【譜例4】

交響曲の終楽章は本来、テンポが速くて力強い音楽であるべきなのですが、マーラーの第9番の終楽章はとってもゆっくりで、息の長いメロディーが弦楽合奏を中心に朗々と歌われていき、「死に絶えるように」(ersterbend)と記されたエンディングでは、弦楽器が最弱音で、息絶え絶えにフレーズを歌いながらフェイドアウトとなります。

【譜例5】