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アラベスクの形式について

これまでの解説では便宜上<前半部分><中間部分><後半部分><終結部>という区分けをしました。

それは、音楽的に 素材の提示(提示部)→ 素材の発展(展開部)→ 冒頭への回帰(再現部) というように聴こえるためです。(→ソナタ形式)

したがって【ソナタ形式の要素を持つ三部形式】のように捉えられることもあると思いますが、違った観点から形式を考えます。

バロック期の多くの作品は、次のような形式によって作られています。

前半部分と後半部分の2部分からなりますので、二部形式という分類が本来の姿です。これは、バロック期の舞曲に多く見られます。

この形式には、一般的に次のような傾向があります。

1)多くの作品で、BはAより長い。(図のとおり)

2)Bの終わり部分にAの要素を用いて終止することがある。

アラベスクは、まさにこの特徴を備えており、バロックの感覚を残しています。

もともと三部形式は、このような二部形式から発展したとされ、いわゆる<ソナタ>も、この形式の延長線上にあります。

時代の進化とともに作品が長大化し、それに伴いリピートが不要となって、今日の三部形式、ソナタ形式が確立したといえます。

アラベスクの形式は?

結論を言いますと、アラベスクはバロックの形式感を残した二部形式と捉えるのが良いと私は思います。

それにはもう一つの理由があります。

その理由とは、<25の練習曲>全体を見渡したとき、前半部分に二部形式が集中して多く、途中から三部形式が主体となり、またロンド形式を交えてくる・・・そこに、ブルグミュラーが生徒へ伝えようとした <形式感> があるように、私は思います。

以上、形式については簡単に触れましたが、参考になれば幸いです。

なお、今日二部形式というと、<歌曲形式>の a a' b a' や a a' b b' を示す場合が多いので、ご注意ください。

最後に、譜面を見ながら聴いてみましょう。(全曲)