あちらこちらに手を素早く移動させて弦を押さえていくので、左手は大変で難しいということがわかります。弓をもつ右手はというと、ヴァイオリン、ヴィオラ奏者は弓を上下に、チェロ、コントラバス奏者は弓を左右に動かしているだけ、と思ったりしてしまいます。これは大ハズレです。
弦楽器の奥の深い音楽表現は右手にかかっています。
右手の弓の動き (ボウイングといいます) がぎこちないと、音色も美しくなく、微妙なニュアンスもつけられないので、演奏家はイメージしていることを伝えることができません。
右手でつぎのようなことをコントロールしています。
・弦をこするときに弓にかける圧力
・ボウイングのスピード
・弦のどの部分に弓をのせるか
・弓をどのように使うか(レガートで弾く、短く弾く、スタッカートではねる、など)
※ これらがすべて思いどおりになるような繊細で鋭い感覚が右手に求められます。
弓の向かう方向によってアップ、ダウンと区別されます。
・ダウン→弓の元(手で持っているほう)のほうから弓を使い始め、腕を伸ばすように弾いていく。
・アップ→弓の先のほうから弾きはじめ、弓を腕で押すように弾く。
※ フレーズをアップで弾き始めるか、ダウンで弾き始めるか、楽譜に記号で記される場合があります。
(記号は次ページ、下の譜例を参照)